当番幹事よりご挨拶

第26回関東ホルモンと癌研究会 当番幹事
織田 克利
東京大学大学院医学系研究科 統合ゲノム学分野
東京大学医学部附属病院 ゲノム診療部

当番幹事写真

 

この度、第26回関東ホルモンと癌研究会を開催させていただくにあたり、当番幹事としてご挨拶申し上げます。

本研究会は、乳癌、前立腺癌、婦人科腫瘍などのホルモン依存性癌に関する臨床および基礎研究の発展を目的として、2004年に「ホルモンと癌勉強会」として発足し、以降「関東ホルモンと癌研究会」として継続・発展してまいりました。これまで関東地域を中心に、多くの専門家が一堂に会し、疾患横断的な視点から意義深い議論が交わされてきた歴史ある研究会であり、私もこの伝統ある会の当番幹事を務めさせていただくことを大変光栄に感じております。

第26回となる今回は、「ホルモン関連がん診療と遺伝医療への展開」をテーマに掲げ、がん診療の個別化が加速する中で、ホルモン感受性腫瘍領域における遺伝学的知見の臨床応用について多角的に議論する場としたいと考えております。

近年、子宮体癌では分子分類の導入により病態理解が大きく進展し、Lynch症候群の診療にも新たな視点が求められるようになってきました。また、ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌においては、PIK3CA、AKT1、PTENの変異を有する症例を対象に、カピバセルチブ+フルベストラントによる新たな分子標的療法が導入されており、Precision medicineの実現が進んでいます。前立腺癌におけるPARP阻害薬(タラゾパリブ)とホルモン療法(エンザルタミド)の併用療法とあわせて、ホルモン感受性がんの診療は、遺伝的背景とも密接に関わりながら、新たな転換期を迎えていると言えます。

特別講演には、新潟大学大学院医歯学総合研究科産婦人科学分野 教授の吉原弘祐先生をお迎えし、「性周期によるダイナミックな子宮内膜の変化と発がんへの影響」というテーマでご講演いただきます。最新の研究成果と臨床への応用が語られる貴重な機会になると確信しております。

また、企業様との連携による共催セミナーも予定しており、ホルモン関連がん診療における新たな治療戦略や技術革新について、実践的な知見を共有する機会となっております。

私自身、婦人科腫瘍を中心としたゲノム医療の研究・診療に携わっておりますが、ホルモン関連がんにおいても治療選択や予後予測、さらには血縁者への医療支援など、さまざまな局面で遺伝医療の役割が拡大しており、本研究会がその臨床展開の一助となれば幸いです。

多くの皆様にご参加いただき、領域を超えた議論と交流を通して、新たな知の創出につながることを心より願っております。

   2025年8月吉日